【救急隊】病院連絡はISBARCが1番です【使い方を解説する/書籍紹介も】

Firefighter

悩める人「救急隊として働いているけれど、病院連絡が上手くならない、、、。ISBARCを使うのがいいって聞いたけど、実際のところどうなんだろう?救急救命士さんに話を聞いてみたいな。」

このような疑問にお応えしていきます。

この記事の内容

  • 【結論】病院連絡はISBARCを使えばOKです
  • ISBARCとは【6項目/頭文字です】
  • ISBARCを救急活動の「軸」にしよう

この記事を書いている僕は、大学で救急救命士の国家資格を取り、2018年まで現場で活動していました。

現在は消防士を辞めましたが、公務員を脱したことにより、ブログでの発信が解禁されたので記事にまとめていきたいと思います。

この記事で皆さんにお届けするゴール

  • ISBARCについて理解できる
  • ISBARCを使った病院連絡ができる
  • ISBARCを救急活動全体の軸にできる

上記を目指す記事です。

現役の救急隊の方は、ぜひ参考にしてくださいませ。

【結論】病院連絡はISBARCを使えばOKです

【結論】病院連絡はISBARCを使えばOKです
世の中には色々な方法が出回っていますが、、、。
救急隊の病院連絡はISBARCを使うのが1番かと思います。

医療の分野で、ものごとを簡潔に伝達するための「専用ツール」ですので。

有名になりつつあるISBARCですが、なかなか分かりやすくまとめている記事がないようなので、ここにまとめます。

ISBARCとは【6項目/頭文字です】

ISBARCとは【6項目/頭文字です】
下記のとおりです。

  • Identify ← 同定する(してもらう)
  • Situation ← 状況を伝える
  • Background ← 背景(経過)を伝える
  • Assesment ← 評価したことを伝える
  • Request ← 依頼する
  • Confirmation ← 確認する

上記のとおり。
順番通りに伝えるだけでOKです。

それぞれについて、深掘りしつつ解説していきます。

①|Identify【同定】・・・あなたの所属や氏名を述べる

病院との電話がつながったら、はじめに行うべきがコレ。
おそらく、自然とできている人も多いかと。

例えば、下記のような感じです。

『〇〇消防署救急隊、救急救命士の△△と申します。』
『救急車の収容依頼の電話になります。』

こんな感じで、所属署と氏名を伝え、これから病院収容のお願いをすることを明らかにしましょう。

イメージとしては、電話に出た相手に、自分のことをIdentify(=同定/認識)してもらうためのフェーズですね。

②|Situation【状況】・・・今の状況を伝える

ここ、重要です。

傷病者が今置かれている「状況」を、簡潔に伝えるフェーズです。

例えば、こんな感じ。

例A:『現在傷病者はショック状態。血圧が低く、脈拍も微弱です。』
例B:『70代男性の意識障害。レベル300で瞳孔不同があり、クッシングバイタルがみられる状況です。』

上記のとおりです。
ここが、うまく伝えられると「勝ち」です。

さらに詳しくみていきましょう。

状況とは、「結論」のことです

相手に、ものごとを分かりやすく伝えるコツがあります。

先に、「結論」から述べること

上記がマストです。

そのため、早い段階で状況(=結論)を病院に伝えるのが良いです。

過去ではなく、「今」の状況のみ伝えること

よくある間違いが下記です。

『午後18時ころから急に胸が苦しくなり、ニトロを服用するも治まらず、、、、、、、
、、、、、、、、こんな感じで、今に至ります。なお、傷病者は現在ショック状態です。』

例えば、下手な人はこんな感じです。

「いや、早くショック状態だって教えろよ!」ってなりますからね。
病院サイドは苛立ちますよ。

日本語で「状況」と聞くと、「過去からの出来事」を詳しく伝えるものだと勘違いしがち。
しかしそれは、この後のフェーズ③のときに行います。

繰り返しですが、先に結論から述べましょう。
病院連絡における「結論」とは、「傷病者の今おかれている状況」です。

③|BackGround【背景】・・・傷病者が119通報した経過と背景を伝える

病院連絡における「背景」とは、2つの意味があります。

  1. 119通報をするまでの背景(=これまでの経過)
  2. その傷病者が抱えている背景(=既往歴や現病歴など)

上記のとおりです。

例えば、下記のような内容を伝えましょう。

例A:『1時間ほど前、訪ねてきた隣人が庭で倒れている傷病者を発見し、119通報となったものです。』
例B:『狭心症で通院治療中の傷病者。30分前からの胸痛。テレビを見ていた際に突然発症し、本人が119通報したものです。』

こんな感じ。

先に、結論として「今の状況」は伝わっていますよね。
なのでここでは「今の状況に至るまでの経過」を伝えるイメージでOKです。

再度繰り返しですが、このあたりの説明がイマイチピンとこない人は、まず»【保存版】救急隊の病院連絡のコツは3つだけ【ハッキリ言って楽勝】の記事からどうぞ。

「S:状況」と関連するもののみ伝える【ダラダラと話さないこと】

Backgroundを伝えるときのポイントは、下記のとおり。

  • 必要なもののみ伝える
  • 先に伝えた「状況」と「関連しそうなもの」のみ伝える

上記です。

悪い例がこちら。

『今朝は5時に起き、6時に朝食を取り、仕事へ行きました。夕方に帰ってきてから、少ししてだんだん頭痛が始まり、、、』

こんな感じですね。
警察の事情聴取みたいに、ダラダラと時間経過をイチから話すのはNGです。

病院側からすれば、「そんなことどうでもいいよ、、、。」ですので。

関連するものを、かいつまんで伝えるようにしましょう。

④|Assesment【評価】・・・自分が実際に評価したことを伝える

救急隊が観察し評価した結果を、病院に伝えましょう。

「評価」に当てはまるものは下記です。

  • バイタルサイン
  • 身体所見
  • 問診

ざっくりとこれら。

※なお、「問診」については、③|Background(背景)の部分で伝えている部分もあるはずですね。

傷病者に実際に接しているのは、現時点では救急隊だけです。
なので、観察結果を正しく伝えることは、かなり大切ですね。

例えば、下記のとおり。

『意識レベルJCS3ケタで、呼吸は10回/分の徐呼吸。脈拍は50回、血圧は190/100です。
身体所見としては、瞳孔不同があり、右が散大しており対光反射もありません。加えて、痛み刺激に対し除皮質硬直があります。』

こんな感じです。
この症例では、恐らく「脳出血」か「くも膜下出血」を疑ってますね。

つまりこの例では、手順②の「S:状況」で下記の通り伝えてあるはずです、

『60代男性。突然の意識障害で、現在は脳ヘルニアの徴候がある傷病者です。』

こんな感じで先に結論を伝えているはず。
イメージ湧きますかね。

先に結論を伝えると、そのあとの観察結果が「信頼してもらえる」というイメージが重要です。

全てを伝えるのは、「二流」の病院連絡です
結論、ここでも先に伝えた「状況」と関連しそうなものを選び、絞って伝えましょう。

例えば、先ほどの症例。
脳ヘルニアが出ている傷病者について、体温とか、心電図波形とか、あるいは腸雑音とかって、本当に要りますかね。無駄に通話時間を長くしているだけかもです。

緊急性の高い傷病者であればあるほど、電話にかける時間も1秒を惜しんでいきたいところ。

無駄な情報は伝えず、病院から聞かれた場合に後から回答すればOKですよ。

⑤|Request【依頼】・・・受け入れのお願い、指示要請など

ここまで病院に伝えてきたことをおさらいしましょう。

  • I:自分の名前
  • S:傷病者の今置かれている状況【結論】
  • B:傷病者の背景(119の経過や既往歴など)
  • A:傷病者の評価情報(バイタルサイン、身体所見、問診など)

上記のとおりですね。

結論、ここまでで「伝えるべき情報」は全て伝達できています。
最後に、「病院への依頼」を行いましょう。

救急隊から病院への「依頼」といえば、下記の2つ。

  1. 受け入れのお願い
  2. 特定行為などへの指示要請

どちらか、時には両方を伝えればOK。

例えば、下記です。

例A『3次病院の適応と考え、貴病院を選定しました。受け入れ可能でしょうか?』
例B『循環血液量減少性ショックに対する輸液を実施するため、静脈路確保の指示をいただけますか?』

こんな感じですね。

病院連絡の目的は、「R:依頼」に対して「OK」をもらうことです

病院連絡のゴールがここです。

  • 医者「うちの病院で診てあげてもいいよ」
  • 医者「そんなに重症なら、ウチで診るしかないな」
  • 医者「その状況なら、ぜひ静脈路確保をしてください」

救急隊が目指す回答は、上記ですよね。
許可をもらうために、順序良く簡潔に伝達するスキルが必要なわけです。

分かりやすく伝えることで、病院サイドはあなたを「信頼」します。
「信頼」されると、「許可」をもらいやすくなります。

そして、スムーズに「許可」がもらえれば、傷病者にとって1番いいですよね。

⑥|Confirmation【確認】・・・医師からの指示を復唱すればOK

医療ミス防止のためには、確認は絶対に必要です。

例えば、下記ですね。

医師『酸素の投与量を10リットルに上げて搬送して。』
救急隊『酸素10リットルに変更ですね、分かりました。』
医師『静脈路確保は、搬送中に有効血管が見つかれば実施するように。』
救急隊『搬送中に有効血管があればIVトライ。了解しました。』

こんな感じです。

不要と思うかもですが、顔の見えない電話連絡では、「復唱」は基本中の基本ですよ。

以上が、ISBARCの概要となります。

表にまとめておきましたので、参考にしてください。

ISBARC
項目 伝えること
I:【同定】 自分の氏名と電話の目的 『〇〇消防署、救急隊の△△と申します。救急車の収容のお願いのために電話しました。』
S:【状況】 傷病者の今の状況(=結論) 『現在傷病者はショック状態。血圧が低く、脈拍も微弱です。』
B:【背景】 これまでの経過と抱える疾患など 『狭心症で通院治療中の傷病者。30分前からの胸痛。テレビを見ていた際に突然発症し、本人が119通報したものです。』
A:【評価】 救急隊による観察・問診結果 『バイタルは血圧90/60、心電図上ST上昇がみられます。下肢に軽度の浮腫、呼吸音は呼気時に断続性のラ音を認めます』
R:【依頼】 病院へのお願いごと 『心臓外科をお持ちの貴病院を選定しました。受け入れ可能でしょうか?』
C:【確認】 病院側からの回答を復唱 『受け入れ可能、ありがとうございます。15分ほどで到着します。』

ISBARCは病院でも使われています【起源を紹介する】

そもそも、ISBARCは病院内で使われていたツールを、救急現場にも応用したものです。

具体的には、当直の看護師が医師に対して、患者の急変や緊急事態を報告するためのツールをして使用されていました。

もともと病院では、「SBAR」という4つのフェーズで構成されていたもの。
救急隊がこれを使用するには、加えて「I」と「C」が必要ということで、現在の「ISBARC」が完成しました。

ISBARCフォーマットについては、取り入れている病院も多いです。

救急隊もそれに合わせて使いこなせるようになるべきですね。

ISBARCを救急活動の「軸」にしよう

ISBARCを救急活動の「軸」にしよう
ISBARCのメリットは、病院連絡がやりやすくなるだけではないです。

ISBARCを軸に、救急活動を最適なものに構築できる

上記です。

ISBARCを覚えると、救急活動そのものがやりやすくなります。

救急隊が現場でやるべきこと【ISBARCを埋めることです】
特に重要なのが、下記の3つですね。

  • Situeation【状況】= この傷病者の状態を、ひとことで言うと何か
  • Background【背景】= なぜ、どのようにこの状況に陥ったのか
  • Assessment【評価】= この傷病者の状況を確証付ける証拠は何か

上記です。

結論、救急活動では上記を集めて、病院へ連絡すればOK。
シンプルに考えましょう。

プラスして、救急隊ができる「病院前処置」を施すだけです。

搬送先が決まらなければ救急隊はゴミ【あなたは医者じゃない】

救急隊が存在する「目的」は、下記です。

傷病者の状態を悪化させることなく、適切な医療機関に、可能な限り早く搬送する

上記です。

結論、搬送先が決まらなければ目的を果たせませんよ。

よくある「勘違い」が、下記です。

『この傷病者の「病名」は何か?』

こればかりに気を取られること。

病名を診断するのは、あくまで病院の仕事です。
救急隊のメインタスクは「搬送すること」ですので。

ここを履き違えると、「偽善者」になるので注意です。

救急隊が購入すべき本【標準テキストは不要です】
3冊ほど紹介しておきます。

↑ISBARCテンプレートを軸とした救急活動のやり方をまとめてあります。

↑各種観察の方法、病態判断の方法はこちら。救急活動全般に役立ちます。

↑後輩指導はぜひこちらで。ISBARCは使える人が多ければ多いほど強いですよ。

上記がおすすめです。
当時の僕は、この3冊を中心に読み込んでいました。

ちなみに救命士標準テキストや救急隊員標準テキストでは、ISBARCについて深掘りされておらず、イメージが湧きにくいかもです。

上記の本で、救急活動全般を最適化しつつ、ISBARCで病院連絡をスムーズにできる隊員を目指していただけたらと思います。

それでは、今回は以上です。